作庭のモチーフとして、湧き水の景色があります。
竹を使用して筧としたり、
水鉢の底から湧き出る噴泉としたりと使用は様々です。
ただ、今回はこれまでの庭を材料そのままに
石を組み直し、規則的すぎた飛び石を据え直し、
庭に転がっていた漬け物石などを加えて動線を新たにし、
コナラなど少しの雑木を植え込んで形にしました。
よって、湧き水の源流も、
よく山野草などを植え込む鉢として使用される抗火石で、
底からボコボコと水が湧きあがるようにしてみました。
その抗火石も、もちろん庭に転がっていたものです。
新しく材料を入れることなく、既存の庭と一線を画す庭に造り直す。
一番難しいことかもしれませんが、職人としては幸せな時なのです。
因みに、国分寺市のこのお宅、
数年前まで隣のマンションは雑木林でした。
コナラやソロの幹立ちと、ハケの景色をモチーフとした小さな流れ
を見た施主さんが、
「昔この辺りで見ていた景色を思い出す」
と言って頂けたことが、最も幸せな瞬間でしたね。