「昔を思い出す。」

作庭のモチーフとして、湧き水の景色があります。

竹を使用して筧としたり、

水鉢の底から湧き出る噴泉としたりと使用は様々です。

ただ、今回はこれまでの庭を材料そのままに

石を組み直し、規則的すぎた飛び石を据え直し、

庭に転がっていた漬け物石などを加えて動線を新たにし、

コナラなど少しの雑木を植え込んで形にしました。

よって、湧き水の源流も、

よく山野草などを植え込む鉢として使用される抗火石で、

底からボコボコと水が湧きあがるようにしてみました。

その抗火石も、もちろん庭に転がっていたものです。

新しく材料を入れることなく、既存の庭と一線を画す庭に造り直す。

一番難しいことかもしれませんが、職人としては幸せな時なのです。

因みに、国分寺市のこのお宅、

数年前まで隣のマンションは雑木林でした。

コナラやソロの幹立ちと、ハケの景色をモチーフとした小さな流れ

を見た施主さんが、

「昔この辺りで見ていた景色を思い出す」

と言って頂けたことが、最も幸せな瞬間でしたね。

IMG_0272

IMG_0233

 

 

この記事を書いた人

アバター

北中 祐介

1978年生まれ。三重県伊賀市出身。
フロッグステラ(横浜市青葉区)に勤務後、石正園(西東京市)にて6年間の修行を経て、2012年4月独立。以後、北中植物商店(旧モリノナカ)を立ち上げ、東京都内を中心に住宅庭園設計・施工・管理を行う。